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AIによるプール溺れ監視システムの最新動向

AIによるプール溺れ監視システムの最新動向

 
斎藤秀俊
水難学者/工学者 水難学会理事/長岡技術科学大学大学院教授










 
水中に沈めた人形を真上からなら発見できるが(7月31日、長岡技術科学大学プールにて筆者撮影)

 プールでの溺水事故が後を絶ちません。昨年7月に高知市で発生した小学4年男児の事故では、30人以上の児童や教員が同時にプールに入っていたにも関わらず、沈んだ児童の発見に時間がかかりました。

 プールの水は透明ですから、沈んだ人を発見するのはたやすいだろうと考えがちです。でも、そこに落とし穴があります。プールサイドから見ていたとしても、10 m以上離れた先のプールに沈んでいる人の発見は難しくなります。ましてや、同じようにプールに入っている人からはたった2 m先に沈んでいる人の発見でさえ難しくなります。動画1ではプールサイドからプールに沈んだ人形の姿を探している様子が確認できます。

動画1 プールに沈んだ人はプールサイドから見えなくなる(7月31日、長岡技術科学大学プールにて筆者撮影)


 プールの水は透明です。水底のラインはきれい、くっきりに見えるので、ほぼ全ての人は「全部見えている」と思い込んでしまいます。でも実際にはプールの中の様子は見えていないものです。

 だからこそ発見が遅れます。プールの中の様子をうかがい知ることができないのは、空気と水との間の光の屈折と反射がいたずらをしたからです。そうであれば、水中に潜り監視すればこのいたずらを回避できるのではないでしょうか。

【参考】 続くプール重大事故 溺れた子どもの発見が遅くなる理由があるから、ぜひ実践してほしいこと

 水難学会と長岡技術科学大学 画像・メディア工学研究室は共同で、水中におけるAI監視システムを研究しています。現在のターゲットは、赤台と呼ばれるプールフロアから小さなお子さんが深いプールに落ちこんだ溺水モデルと、プールサイドから直接深いプールに落ち込んだ溺水モデルです。ここに焦点を絞り、AIによって正確に検知するシステムを構築しています。

 開発を指揮している同研究室の藤井賢吾助教によれば「AIはなんでもできると勘違いされてるきらいがあるが、完成度が高くなってもあくまでも人間の補助」と考えることが重要で、ましてや人の検知システムやアルゴリズムを十分にそろえたとしても、どういった観点の学習をAIにさせるかという極めて重要な点が残り、そのために先端研究は未知の世界での戦いになるということです。

 溺水のパターンを全て炙り出し、その特徴をAIに一つ一つ学習させるという手間が重要な意味をもちます。溺水の様子を撮影した動画は、1枚ずつの静止画(コマ)がコマ送りになることで動いているように見えます。実際に、人に見立てた人形を溺水にできるだけ近い状態で沈め、そこで得られた水中動画から静止画を丹念に集めて、一つずつAIに覚えこませます。人形の他に大勢の人間がプールに同時に入っていたとしたら、さらに別の学習が必要になります。

 そのような作業について、動画による解説が8月8日朝7:45分から「NHKニュース おはよう日本(関東甲信越)」で放映されましたので、見逃しサイト等でご確認いただけたら幸いです。

ここからは専門的な解説になります

 今回、AIを使用して行っているタスクはオブジェクトトラッキング技術です。この技術では、AIにて映像中に写っている物体を検出、すなわち物体の位置を割り出して、次にあるコマと、それに続くコマの双方に写っている物体同士が同じものであると認識、つまり追跡させます。

 開発中のシステムでは、物体検出のモデルとして「YOLOv8」を使用しています.また、人物(人形)の追跡を行なうためのアルゴリズムには「ByteTrack」を使っています。

 画像・メディア研究室では、信号処理および画像認識AIを用いて、映像中の魚を識別し、各個体の行動パターンを分析する技術をすでに構築しています。魚の養殖において、個体の健康管理、餌の量やタイミングの調節、水質の制御等のために各個体をモニタリングしています。こういった技術が今後水難事故防止に応用されていくと考えられます。

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